嬉し恥ずかし文化祭

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彼に負担をかけるくらいなら、メープルシロップくらい自分でかける。 そう思いつつも、少しくらいは右京と会話が出来るかなと期待して待っていたのだが、 「おにーさーん!」 右京を呼び止める声が止まない。 今度は大学生くらいの女子グループに捕まった右京の背中を、少し離れたところから見ていた美紅は、 「……っ」 滲みそうになった涙を堪えて、慌てて下を向いた。 それに気付いた相原が、それでも接客中の右京を呼ぶことが出来なくて、 「みくたん。俺で良かったらパンケーキあーんしよっか?」 出来るだけ明るく声をかけたが、 「ほれ、間宮。この学校で右京先輩の次にイケメンと言われてる私があーんしてやろう」 左手だけで相原の腹の辺りを押しのけた天野が、美紅の口元へとパンケーキの刺さったフォークを運ぶ。 それを、接客をしながら横目で見ていた右京は、 「……!」 天野に対して昨日から数えて三度目の嫉妬心を燃えたぎらせた。 「……ん?」 すぐに右京の殺気に気付いた天野は、右京の方をちらりと見て、 「んべ」 美紅の口にパンケーキをもう一切れ運びながら、右京に向かって舌を出す。 涙を堪えて口をもぐもぐと動かしている美紅はそれには気付かなかったが、 「お前って本当にいい度胸っていうか……肝が()わってるよなぁ」 右京の気持ちと天野の考えの両方を()み取った相原が、呆れたように溜息をついた。
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