嬉し恥ずかし文化祭

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美紅が遠慮したからというのも理由の一つではあるのだが、結局、美紅の来店中に右京が彼女の傍へ寄ることは叶わなくて。 他の客からのお呼びの声が少なかった相原と村田が美紅に代わる代わる声をかけてくれたのだが、 「……」 美紅は愛想笑いを浮かべつつも、明らかに元気がないのが見て取れる。 カフェを出る時、 「みくたん! 今度いっちーと二人きりになれた時は、さっきの分も含めてうんとワガママ言っていいからな!」 相原は拳を握り締めてそんなエールを送ってくれて、 「市川なら多分、間宮さんにおねだりされたら鼻血出して喜ぶと思うよ」 村田は何故か自信満々にそんな発言をした。 だが、それに対しても美紅は曖昧(あいまい)に微笑んだだけで、そのまま会釈をして天野と共に出て行ってしまった。 「あっ、美紅……!」 右京は慌てて美紅に声をかけようとしたが、 「おにーさん、次こっち待ってるんだけどー!」 やはり女性客に引き止められてしまう。 “もう少しで自由時間だから、そうしたら一緒に回ろう”と伝えたかったのに、それをする暇すら与えてもらえなかった。 (くそっ! なんで俺ばっかり!) こうなることは分かっていたはずではあるが、右京の望みが何一つ叶えられなくて苛立ちばかりが募っていった。
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