嬉し恥ずかし文化祭

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「間宮……大丈夫?」 イケメンカフェの開かれていた三年一組の教室を出て、前を歩いていた天野が心配そうに後ろの美紅を振り返る。 「うん。平気だよ」 そう言って微笑む美紅は、全く平気そうではなく―― 今にも泣き出しそうな顔をしていた。 「どこかで休む? 保健室とか……」 「……少しだけ、静かなところで一人になりたいかも」 多分、今の美紅には天野が何を言っても強がるだけのような気がしたから。 「……分かった。合流したくなったら、いつでも連絡ちょうだい」 天野は、美紅からの連絡にすぐに気付けるように、ブレザーのポケットに入れていたスマホを取り出して手で持つ。 「うん。ありがとうね、天ちゃん」 そうして一人でとぼとぼと歩いていく美紅の後ろ姿を見送りながら、 『間宮は、今は一人で静かなところで過ごしたいそうです』 今頃はまだイケメンカフェ内で女性客にチヤホヤされながらうんざりしているであろう右京へと向けて、そんなメッセージを送っておいた。 あとをどうするのかは、彼次第。
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