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「……ねぇ。右京先輩がジュース噴きかけたそのブレザーって、先輩の顔写真付けて売り出したら売れるんじゃない?」
村田の隣で焼きそばをズルズルとすすっていた金の亡者な天野が、ふと物欲しそうな目で彼氏の制服を見つめて、
「いや。市川が今着てる制服を“脱ぎたてです”ってメッセージと顔写真付きで売る方が高値がつくだろ」
村田はまだ制服をティッシュで押さえながら首を横に振った。
「……制服汚して悪かったとは思うけど、それはあんまりじゃないか?」
美紅から借りたハンカチを口元に当てたままの右京がまだ少し咳き込みながら、友人カップルをジロリと睨む。
「いや、だってさ。中学の卒業式の時とか、お前の学ランのボタンだけでも大騒ぎだったじゃん。お前の私物にはそれだけの価値がある」
村田のその台詞に、
「右京くんのボタン?」
右京の背中をさする手を止めて反応したのは、美紅だった。
「誰にあげたの?」
また潤み始めた美紅の不安そうな目に見つめられて、
「……俺は誰にもあげたつもりなんてない。けど、拒絶してるのに女同士で取り合いするみたいに無理矢理引きちぎって全部持っていかれて……女って凄く怖いんだなってその時に思った」
右京は当時の出来事を、少しだけ身震いしながら正直に話した。
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