嬉し恥ずかし文化祭

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「“もみくちゃにされる”って、まさにあーいうことを言うんだなって勉強になったよ」 制服を拭き終えたらしい村田は、食べ物の袋の中からフランクフルトのパックを取り出して大きな口でかじりつく。 口の周りをケチャップとマスタードでベタベタにしながら食べている彼を呆れた眼差しで見ていた右京は、 「そういう村田は? 当時の彼女に第二ボタン渡すって張り切ってたよな?」 自分はもみくちゃにされて他人を見ている余裕などなかったので、その行く末を知らないことに今、気が付いた。 「……渡しに行ったら、受け取りを拒否られた挙げ句、今日で別れて欲しいって振られて終わった」 「……」 右京が今度は哀れみの眼差しで友人を見つめるその目の前で、 「ねぇ。それ一口ちょーだい」 天野が村田の手を掴み、その食べかけのフランクフルトを横から一口分だけ強奪した。 右京が思うに――多分、昔の彼女の話題が出たための、嫉妬による行為。 二人で仲良く一本のフランクフルトを食べている友人カップルを見ていた右京は、 「……」 自分の隣で、静かに豚汁をすすっている彼女の横顔を盗み見た。 「……美紅も唐揚げ食べるか?」 「いいの? 食べたい!」 器から顔を上げて、ぱっと嬉しそうな顔をする彼女の口元へと、 「ん」 爪楊枝に刺した唐揚げをそっと差し出す。
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