嬉し恥ずかし文化祭

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元は二年四組の教室――今はおばけ屋敷になっている部屋に、一歩足を踏み入れると、 「な、何か寒い……白い煙も出てるし」 美紅が更にびくびくと怯え、 「ドライアイスか。典型だな」 美紅に嫌われること以外に怖いものなど何もない右京は、そんな身も蓋もないことを言い放った。 「なぁ、美紅。そんなに怖いならもう出ようか」 あまりにも美紅が気の毒に思え、逆走にはなるが、右京は入口扉の方へと彼女の手を引く。 「こ、怖くなんか、ないもん……」 なのに、何故か美紅はそれを(かたく)なに拒絶する。 「美紅」 「だって、もしここで私が怖いなんて言ったら……右京くんも、私のことぶりっ子してるって思うでしょ?」 美紅の瞳が涙で潤んでいるのが、狭い順路を示す弱々しい明かりの中でもはっきりと見えて。 「……誰だよ、そんなくだらないこと言ったの」 思わず、右京の声が低くなる。 「美紅。怖い時は素直にそう言ってくれ。甘えてくれた方が、俺は嬉しいから」 そして、美紅と繋いでいた手を離し、彼女の腰に手を回してぐっと強めに抱き寄せる。 「俺の前では、強がらなくていい」 「……じゃあ、ゴールまでずっとギュッてしてて欲しい」 「お安い御用だ」 ふっと優しく微笑んだ右京が、美紅をしっかりと抱き寄せたまま、ゆっくりと中へと進んでいって――
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