嬉し恥ずかし文化祭

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美紅と右京よりも随分と早くにゴールに到着した天野・村田カップルは、出口扉の外側で、友人カップルの到着を待つ。 「……遅いね」 「アイツら、中でイチャついてんじゃないだろうな?」 いろんな意味で二人のことが心配になってきたその時、 「「キャーーッ!」」 おばけ屋敷の中で、複数の女子生徒の黄色い悲鳴が上がったのが、教室の外にいてもはっきりと分かった。 おばけ屋敷にはおよそ似つかわしくないその雰囲気に、 「なっ、何事!?」 天野は驚き慌て、 「あー……アレは多分、おばけ役の女子たちが、客として来た市川の存在に気付いて上げた歓喜の悲鳴だな」 毎年恒例の現象なのか、村田が冷静に分析と説明をする。 村田の予測通り、 「右京先輩だー! カッコイイー!」 「みくたんと文化祭デートですかー!?」 きゃあきゃあと楽しそうな声が聞こえてきて。 しばらくそのまま待機していると、出口からげっそりと疲れた顔をしている右京と、 「何か……いいおばけさんたちだった」 中でおばけ役をしていた女子生徒たちから、 「敵が多いかもだけど負けないでね、みくたん!」 と、そんなエールをもらえて、嬉しそうにはにかんでいる美紅が出てきた。 こうして、美紅にとって右京と過ごせる最初で最後の文化祭は、最高の思い出となって幕を下ろしたのだった。
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