余韻

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余韻

「はぁー。すっごく楽しかった!」 文化祭からの帰り道、学校から駅までの道を、美紅と右京が手を繋いで歩く。 美紅にとって高校での初めての文化祭は余程に楽しかったらしく、まだその余韻から抜けられない。 ――かと思えば、 「……でも、もう来年は右京くんは大学生なんだもんね」 途端にしゅんと項垂れて悲しそうな顔をしてしまう。 そんな彼女を見て、右京はずっと言おうか悩んでいたことをやっぱり言うことに決めた。 「美紅……今日、俺の家来ないか?」 「いいの? 行きたい! 右京くんと一緒に勉強するの久しぶりだもんね!」 ここ最近の放課後は文化祭準備で忙しかったため、右京の部屋に遊びにいくこともしていなかった美紅は、嬉しそうに微笑んだ。 が、 「いや、そうじゃなくて……泊まりに来ないか?」 「……へっ?」 彼の恐る恐るな質問に、美紅は間抜けな声を上げて固まる。 「もうすぐ都古の誕生日なんだけどな。プレゼントは遊園地がいいって言ってて、今日の夜からうちの家族は俺以外、車中泊しながら向かうらしくて」 「……」 明日は休日なので、都古たちだけでなくもちろん美紅も右京も学校は休みではあるが。 「え……でも、ご家族がいないからって勝手に泊まるなんて……」 美紅はあたふたし始め、 「美紅さえ良ければいいよって、両親からも許可は出てる」 右京が繋いだままの手にきゅっと力をこめた。
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