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朝食と後片付けを終えた二人は、
「……」
「……」
リビングのソファーに並んで座り、テレビ番組を観るともなく観ていた。
喧嘩なんて全くしていないのに、なんだかとても気まずい。
「あの……美紅」
その空気に耐えきれず、右京の方から沈黙を破った。
「体は平気か?」
「……うん」
美紅は昨夜のことを思い出して、恥ずかしそうに小さくコクリと頷く。
「痛みとかは?」
「大丈夫だよ」
本気で心配そうな声を出す右京を安心させようと、美紅はやっとテレビから右京の方へと顔を向けて――
「……俺のこと、怖くないか?」
昨日、抱かれる前に見た時と同じ、悲しそうに潤む蒼い瞳と目が合った。
「えっ? うん」
美紅はわけが分からないながらも小さく頷き、
「本当に? ……俺、ゆっくり動くって約束したのに、途中から全然優しく出来なかったから」
右京は昨夜のことを後悔しているのか、膝の上でつくった両手の拳をぎゅっと強く握り締めた。
そんな右京の左手に、美紅の右手がそっと重なる。
「私はすっごく幸せって思ったんだけどな。右京くんは違った?」
眉尻を下げた困惑顔で見つめられ、
「……昨日の夜も、今も、すっごい幸せ」
右京は思わず、美紅を両腕で思い切り強く抱き締めた。
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