余韻

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「先輩。おめでとうございます」 天野がニヤニヤと笑いながら右京へと祝辞を述べると、 「……何がだよ」 右京は何のことを言われているのか瞬時に察したようで、すぐに天野から目を逸らすようにして真っ直ぐに前を向く。 「右京くん、何かおめでたいことあったの?」 天野の言葉を素直に受け止めた美紅は、祝い事なら自分も祝わねば! と思い、隣の右京の顔を覗き込んだ。 「……まぁ、嬉しいことなら」 美紅との幸せな時間を過ごせたのは事実なので、右京は恥ずかしそうに顔を背けたまま、それだけを答えて、 「えーっ。なになに、何があったの?」 美紅はわくわくした眼差しを向けてくる。 「……」 無自覚天然少女を恋人に持った右京は、切なげな表情で美紅を見下ろし、 「あちゃー」 そもそもの原因となった話題を振った張本人である天野が、右京を哀れんで額に手を当てた。 と、その時、 「はよーっす」 三人の後ろから、村田が手を振りながらやって来た。 そして、振り返った美紅と右京の顔を交互に見て、 「ん? 何だ、お前ら。やっとヤれたのか」 天野ですら気を遣って濁した台詞を、この男は朝っぱらから堂々と口にした。
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