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二人でずぶ濡れになりながら駅までの道を走り、駅のコンビニで傘を買おうか悩んだが、
「ここまで濡れたら、もう今更だろう」
その右京の一言に納得してしまうくらいに全身ずぶ濡れだったので、傘は買わずにそのまま市川家の自宅へ直行。
右京からバスタオルと、制服が乾くまでの間に着ておくためのシャツを手渡され、
「おぉ……これが彼シャツ!」
右京の制服のカッターシャツは、やはり美紅が着るとシャツワンピース風になる。
濡れた制服は、右京が乾燥機にかけてくれて、乾くまでの間は彼の部屋で過ごすことに。
久しぶりに招いてもらえた右京の部屋で、二人でラグの上に並んで座り、
「あったかーい。甘くて美味しい」
彼の淹れてくれたゆず茶を味わう。
嬉しそうな美紅に対し、
「……」
長袖のTシャツにデニム姿の右京は、険しい表情をして美紅から顔を背けている。
「右京くん……?」
「うん?」
呼べば普通に返事をしてくれるので、きっと美紅に対して不機嫌になっているわけではない。
「やっぱり、私、お邪魔だった……?」
よく考えてみなくても、彼は受験生。
そろそろ受験勉強に本腰を入れるべきなのであって、美紅を部屋に招いている場合ではないのだ。
美紅を呼んでくれなかったのも、きっとそういうことだったはずなのに。
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