366人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺が、美紅のことをそんな風に思うわけないだろ」
それは、いつかの時にも言われた台詞。
彼の言う通り、右京に邪魔者扱いされたと思えるような態度なんてとられたことはないけれど。
「じゃあ、なんで私の方を見てくれないの?」
気になるのは、彼の目線。
この部屋に入ってから、まだ一度も彼とは目が合っていない。
「……」
再び黙り込む右京に、
「右京くん……」
美紅の瞳が不安と涙で潤む。
「……あのな、美紅は自覚がないかもしれないけど」
顔を背けたまま、右京がぽつりと答える。
「その……“見えそうで見えない”っていうのが一番エロく見えるんだぞ」
「えっ」
彼の言葉に、美紅は慌てて自分の体を見下ろす。
第一ボタンを外してはいるが……そして確かにオーバーサイズなので胸元は多少緩んではいるが、それでも別に下着は見えそうではない。
シャツの裾だって十分に長さがあるので、座った今の状態だと太ももが少し見えているくらいで。
恥ずかしい部分は、きちんと隠れているのに。
「でも、私……右京くんにはもっと恥ずかしい姿いっぱい晒しちゃってるんですけど」
美紅がぽそりと漏らしたその直後、
「……っ!」
右京が、ローテーブルの上に置いてあったボックスティッシュを物凄い速さで数枚引っ張り出し、それを慌てて鼻にあてた。
美紅が呆然と見守るその目の前で、右京の鼻のティッシュがみるみる赤く染まっていき――
最初のコメントを投稿しよう!