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それが鼻血だと分かるまでに数秒を要した。
「えっ、なんで!? 大丈夫!?」
美紅は膝立ちの状態で右京へとにじり寄り、追加のティッシュを引っ張り出して右京へと差し出す。
ついでに、少し離れた場所にあったゴミ箱を引き寄せた。
「美紅……今はせめて、胸元と脚は隠してくれ」
「私!?」
右京に言われ、出血の原因が自分だと漸く理解した美紅は、シャツの第一ボタンを留め、髪を拭くのに使っていたバスタオルを太ももに被せた。
「国宝級のイケメンって言われてる右京くんが……私を見て、鼻血?」
相変わらず替えのティッシュをせっせと手渡しながら、呆然と呟く美紅に、
「……美紅を抱く前の俺なら、こんなことにはなってない」
天井の方を向いた右京が大量のティッシュの下から、くぐもった声でふごふごと答えた。
「美紅のぬくもりを知ったあの時から、毎日自分を抑えるのに必死なんだ」
「……」
てっきり、美紅に対して幻滅したとか飽きたとか、そういう感情を抱かれているのだと思っていた美紅は、黙ったまま右京を見つめる。
「美紅を大事にしたいって気持ちは、ずっと変わってないけど……俺も男だから、そういう刺激の強い格好で迫ってこないで欲しい。我慢出来なくなるから」
それは、つまり……?
「私に飽きたから遠ざけてたわけではないの?」
「そんなわけないだろ。あの時以来、美紅のこと何度でも抱きたくて、ずっと我慢してるのに」
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