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そのまま自分と美紅たちの分の会計をまとめて済ませた右京は、美紅の手を優しく引いて店を出ると、そのまま目的地も告げずにずんずんと歩を進める。
「あのっ……右京くん、なんで?」
聞きたいことが多すぎて、そんな質問のし方になってしまった。
「何がだ?」
それでも、美紅を振り返る右京の目は、カラコンを付けていても優しい眼差しをしているのが分かる。
「なんで、あのお店にいたの?」
「前に天野が、朝じゃなければいいのかとか言ってたから、何となく今日の午後かなと思って」
たったそれだけの情報で、日時と場所を割り出してしまう右京は川上の言う通り、美紅のストーカーなのかもしれない。
けれど、不思議とそれを気持ち悪いとは思えなくて。
「いつから後ろの席にいたの?」
「……美紅が店に入ったのを確認してからだから、その少し後かな」
とても言いにくそうに答えた右京は、相変わらずスタスタと歩きながらも、気まずそうに美紅から顔を背けた。
「……天ちゃんと川上先輩に嘘をついたのは、どうして?」
美紅が言っているのは、もちろん――
「……不能だとかどこまで頑張れるのかとか、そんなことを言われたらムッとして当然だろう」
二人が知りたがっていた、回数の話。
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