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プロローグ
朝のSHRが始まる前のひととき。
一年一組の教室には、友人の宿題のノートを必死に写させてもらっている女子生徒が一人と、それを呆れた眼差しで見ている女子生徒が一人いた。
殺伐とした空気を放っているのはノートを書き写している彼女だけで、教室内や廊下を行き交う他の生徒たちは、朝の挨拶を交わしながら束の間の時間を思い思いに過ごしている。
「私、間宮がいなかったら、この学校で生きてけないわ」
ノートを書き写している女子――天野 すみれがしみじみと呟き、
「毎日バイト頑張ってる天ちゃんも偉いと思うけどね」
そのノートの持ち主である間宮 美紅が、彼女の隣の席に座ったまま苦笑した。
そんな美紅に、天野はふと思い出したように顔を上げる。
「そういや、右京先輩とは相変わらず?」
「えっ? それはどういう意味?」
突如出てきた彼氏の話題に、美紅は面食らった。
特に喧嘩などもなく、とても安定した関係を続けられていると思っているのだけれど。
「いや、ほら。高嶺の花って言われてて校内一目立つ美男美女カップルだからさ。少女漫画とか恋愛ドラマだと、この辺りで恋のライバルだとかすれ違いだとか、何か一悶着あるじゃん?」
一気に不安になるようなことを、何でもないことのようにすらすらと答えた天野は、面白そうにニヤリと微笑んだ。
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