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耳が痛くなるほどの静寂の中、それは降り立つように現れた。
静止画に見えるほど凪いだ海の上に、二本の細くしなやかな白い足を下ろし、真珠の輝きと似た真っ白な衣をひらひらと躍らせている。金の髪はゆるやかに波打ち、足首まで伸びる。すらりとした両腕は胸のところで緩く組まれ、微笑みを浮かべた表情も相まって恋焦がれる何かに祈っているようだ。
何よりも美しい彼女は、背中からは純白の翼を片方だけ生やし、頭の上には金色の輪を浮かべていた。
天使さまだ。
まだ小学生にもなっていない幼い天月海月は、人に似た何かが海の上に立っているという異常事態に疑問や恐怖を感じることはなく、ただ純粋にキレイだと思った。
綺麗で、美しく、輝いている。
父の夜釣りに連れてこられた初めての海で、海月はただその姿に見惚れた。
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