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「もう大丈夫だ! みんな!」
校長先生の声だった。
あとでわかったことなんだけど、この時、うちのクラスが騒がしくて、様子を見に来た先生がいたそうだ。
その先生が山瀬川先生の怒鳴り声を聞いて、その内容からただ事ではないと、窓へとよじ登ってうちのクラスへと突入してくれたそうだ。
「校長先生ー!」
みんなの泣き声が聞こえた。
「もう大丈夫。大丈夫だ」
校長先生の優しい声と一緒に、不意に温かい手が僕の背中に当てられ、僕も安心して泣いてしまった。
やがて、溝乙女先生が僕たちの催眠術を解いてくれて、僕らは無事、この狂気のホームルームから生還することができた。
「今日は親御さんに迎えに来てもらうから、それまで体育館で待つことにしよう。教室にいるのも嫌だろう」
校長先生の提案で僕らはそれぞれ荷物を持って体育館に移動することになった。
半分のクラスメイトはまだ泣いていた。
泣いてないクラスメイトも憔悴しきっていて、それぞれの荷物を用意するのも重苦しい雰囲気の中、静かに行われた。
僕も、机の横にかけてある通学カバンを手に取り、淡々と机の中に入ってある教科書をカバンの中に入れていった。
全ての教科書をカバンに詰めた後、最後に机の奥にしまい込んだいくつかの封筒を手に取った。クラスメイトの盗まれたという給食費だ。
昨日の掃除の時間、山瀬川先生の机を掃除していて偶然見つけたのだ。
封筒に書かれた名前はバラバラ、いつの給食費かという日付もバラバラで、僕は昨日これを見つけた時、山瀬川先生が回収を忘れている給食費だと思い、それなら盗んでもわからないだろうと失敬したのだった。
まさか山瀬川先生も盗んでいたとは。世も末だと思った。
「でも、さっき先生が『俺の机に入っていたものは俺のもの』って言ってたしな」
僕はその給食費の封筒たちがしわくちゃにならないように教科書の間に挟むと、丁寧にカバンのなかにしまい込んだ。
おわり
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