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きつねとたぬき
きつねのこん助とたぬきのぽん太はにらみ合う。
「今日はぼくからいくよ!」
「のぞむところだ!」
ぽん太の気合の入った声に、こん助が怒鳴るように返事をする。ぽん太はサッと木の葉を取り出すと、額の上に置いた。
どろんっ!
音ともに煙がもくもくと立ち込めた。しばらくして煙が消えるとそこにはもうぽん太の姿はない。
「すぐに見つけてやる!」
こん助はぎらりと目を光らせる。秋の森には様々な物がある。落ち葉、栗、松ぼっくり、どんぐり、そして…
「あ、このきのこでしょ!」
ぽんっと軽い音を立てて、こん助の指差したきのこはぽん太に変わった。きのこには、ぽん太の目の周りの模様と同じように黒い帯があったのだ。
「ぬうぅ…ばれちゃったか。今度はこん助の番だぞ!」
悔しがるぽん太に、ニヤリと笑みを返してこん助は木の葉を額に乗せた。今回の勝負に勝てば、こん助の勝ち越しだ。負ける訳にはいかない。
どろんっ!
ぽん太は黒く縁取られた目を真ん丸にして、秋の山を観察する。制限時間の3分以内に、変化したこん助を見つけなくてはいけない。必ずここから見える場所にいるのだ。集中、集中…。
「あ、この紅葉でしょ!」
ぽんっ!
「なんでわかったんだよー!」
こん助は悔しくて地団駄を踏んだ。こんなに沢山ある紅葉の中から見つかってしまうなんて、納得できない。
「こん助の毛の色とそっくりだったんだよ。というか、もう、そのまんま!」
ぽん太はそう言って、ケラケラと笑った。こん助はぎりりと歯を食いしばった。
「たぬきなんかに見抜かれるなんて…!」
こん助とぽん太はかれこれ1年ほど、この化かし合い勝負を続けている。実力は拮抗しており、どちらかがずっと勝ち続けることはなかった。
きつねとたぬきは、昔は仲が悪かった。しかし、最近では縄張りが安定し、争いはなかった。お互い特に干渉することもなく、ごくごく平和に過ごしていた。
とは言え、会っているとなるとお互いの種族はいい顔はしないだろう。2匹は仲間には内緒で、この化かし合い勝負を続けていた。
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