神様の愛人

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「ぐすっぐすっ、うう…」  正座で座る私の腿に、縋る様に顔を埋めるアルハラさん。 「ノリちゃぁん……ごめんれぇ、ごめんれぇ…」  恐らく私に似ていたのであろう、前世の細君に向けてひたすら謝罪している。 「ボクもうおしゃけのみたくらいよおおお!!」  ああ、なんて惨めで哀れな人間なのだろう。 「れも会社潰れちゃうからぁ!ボクがおしゃけのまないろ会社潰れちゃうっれ!みんながボクをいじめるんらああ!」  多分、この子羊は、前世からスキルを与えられていた。転生が1度目なのかも怪しい。 「ノリちゃぁん!たしゅけて……くるしい、くるしいよぅ…」  何度死ねば断るものか、 「たたないんだよぅ……おしゃけが……おしゃけが悪いんだぁ、分かってるのに…」 どこまで捧げれば気が済むものか、 「こどもがほしぃ、こどもがほしぃよぉ…」 どれだけ捨てれば理解するものか、 「ノリちゃん……ゆるして……おねがいだよぉ…」 業というものを、測られているのだ。  どうしようもないカス、ゴミのような人、卑屈で矮小、泣いて縋る事でしか想い人を引き止める術がないクズ。  ホント、 「あはぁ」 たまらない。 「何でお酒飲んじゃうのかなぁ?ねぇ?ねぇぇ?」 「ひいぃ!ノリちゃん!ごめんなしゃい!ごめん!」 「ごめん!?ごめんなのぉ!?ねぇ!」 「あぁ!すいません!すいませんれした!」 「子供欲しいんだぁ!?子供欲しいのにお酒飲んじゃうのぉ!?そのせいなのにぃ!?」 「ごめんなしゃい!すてないで!すてないでぇ!」  みんなが何とも言えない顔で私達をみている。  もうお前産んでやれよ、って声が聞こえてきそうだが、私より大切な者を、彼に与えてやる気など毛頭ない。 「もーしょうがないなぁ」 「ごめんんんごめんなしゃぁぁいいぃ」 「回復魔法かけなきゃねぇ」 「うん、おねがいノリちゃん肝臓ヨシヨシしてぇ…」 「はいはい。ホント、ダメな人なんだから…」   彼の頭を撫でながら、私は補助魔法をかける。  このまま、私なしにはいられないまま、殺すのだ。  二度と子を得られないと理解した時の、彼の顔は一体どんなだろう。ああ、早くみたい。早く殺さなくちゃ。  神になど、妻になど、けして返してやるものか。  彼の魂を、永遠に舐り続けるのだ。彼の希望も尊厳も全部、私だけが蹂躙して良いのだ。きっと、きっと愉しい。 「さぁ、早くねんねしようねぇ…」  私は、死霊術師なのだから。
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