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 告白において一番大切なのは、甘いムードでも、相手をとろかせる言葉でもない。  タイミングだ。   「バレンタイン直前にフラれるとか、もー、なんなのー!」  アルコールでほんのり赤く染まっていくの顔を、1334×(かける)750px(ピクセル)が四角く切り抜く。興奮するとガキのように頬をりんごみたいに丸くするのは、昔から変わらない。 「ミントのタイミングの悪さは相変わらずだな」  嫌味だと分かりながらスラスラと俺の減らず口が動くと、スマホの画面越し、むっと眉間に皺が寄った。 「それも自分の誕生日にか。随分なプレゼントを貰ったな」 「……うるさいなぁ」 「23歳おめでとう、ミントの失恋に乾杯」  さすがに言い過ぎた、と後悔するやいなや、 「でも良かったぁ! バレンタインの夜にが暇なおかげで、こうして飲めるもんね」 「こっちの退勤時間を見計らって連絡してきたのは、どこの誰だけ」 「毎年バレンタインに限って、一緒に過ごす彼女がいないナオトもかなりタイミングに恵まれていないよね!」  憎まれ口を叩くのはお互い様だ。  右手の人差し指と中指でゆるくピースマークを作り口元に当て、エア煙草を燻らしながら「あー、もー、やってらんない!」と管を巻き始めた。 「吸えないくせに」 「ポーズだけでも取らせてよ!」  モニターの隅でミントの部屋の窓から月が覗き、さっきから大して口を付けられていない缶ビールの表面を照らしている。ぽつんと寂しそうだ。  告白するタイミングを失った嘆きは、痛いほど分かる。  俺なんて、この8年間ずっとタイミングを失ってばかりだ。ーー腐れ縁ほど、恋愛に厄介なものはない。
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