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「やくそう! やくそう! ブレイラのやくそう! あっ、こっちにも!」
ゼロスは次々に見つけて、小さな両手にいっぱいの薬草を摘んだ。
ニコニコしながら薬草を鞄に入れてぎゅ~っと抱き締める。
「ブレイラ、よろこぶかなあ」
ゼロスはブレイラの笑顔を思い描いて笑顔になる。
微笑ましいその様子にハウストも少しだけ気持ちが穏やかになったが。
「あ、かわだ!」
ゼロスが川を見つけた。
嬉しそうに川の畔に駆け出したゼロス。
それは川といっても小川ほどの大きさだが、幼いゼロスからすれば充分川だ。
…………ハウストは嫌な予感がする。なぜならゼロスは自分は泳ぎが得意だと信じていて、水遊びが大好きなのだ。
一緒に入浴した時などとても大変で、湯に浸かって遊ぶゼロスから目が離せない。気が付いたら気持ち良さそうにぷかぁ~と浮かんでいるのだから。
ハウストとしては入浴時くらいゆったり過ごしたいが、ブレイラから『今日はゼロスも一緒にいいですか?』とお願いされると断れない。ゼロスが一緒の状況で色事に持ち込めるとは思っていないが、それでもブレイラとの入浴は魅力的なのだ。
「わあ~、きれい~」
ゼロスは川を前にして瞳をキラキラ輝かせた。
その様子にハウストの嫌な予感はますます高まっていく。
だがゼロスは呟いてしまうのだ。
「……ちょっとだけ、いいかな? ちょっとだけ」
ゼロスはきょろきょろと周囲を見回す。
ハウストは咄嗟に身を隠したが、誰も見ていないことを確かめたゼロスは靴を脱いで浅瀬に足をつけた。
「つめたい~」
浅瀬でパシャパシャ水を跳ねて遊びだした。
ブレイラから一人で水遊びをしてはいけないと注意を受けているはずだが、どうやら我慢できなかったようである。
……あいつめ。
ハウストは苦々しい顔になる。
駄目だ。やはり当分ゼロスを一人で出歩かせるのは禁止だ。危険すぎるし、なにより自由すぎる。
お使いもここまでだ。
きつく注意しようとハウストが一歩を踏み出そうとした、その時。
「あっ、カエルさん~! えいっ!」
ドボンッ!!
「ゼロス?!」
ハウストはぎょっとした。
カエルを見つけたゼロスが川に飛び込んだのだ。
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