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パチパチと焚火の火が燃える。
焚火の周りにハウストとゼロスの服を干して、二人は裸のまま焚火を囲っています。
ゼロスはともかくハウストの裸体は困るので腰に私のヴェールを巻いてもらいました。目のやり場に困るのですよ。
「寒くありませんか?」
私も焚火を囲みながらハウストとゼロスを見る。
この辺りは温暖な気候なので裸でも大丈夫でしょうが、ずっと泳いでいた二人が体を冷やしているんじゃないかと心配です。
「大丈夫だ。心配するな」
「ぼくもだいじょうぶ!」
ハウストに続いてゼロスが元気に答えました。
それどころかゼロスはとても楽しそうにすら見える。いつもと違った状況が楽しくて仕方ないのでしょう。きっと青空の下で裸になっていることも。
私たちは家族四人で焚火を囲みます。
「ねえ、ブレイラ。きいてきいて」
「なんですか?」
くいくいっと袖を引かれて振り返る。
隣にちょこんと座っているゼロスが瞳をキラキラ輝かせて見上げていました。
「あのね、ぼく、ひとりであるいたよ? しらないひとばっかだったけど、がんばったの」
「そうでしたか、えらかったですね。寂しくなかったですか?」
「えっとね、うんと、…………ちょっとさびしかった。ブレイラ、だっこ」
「いいですよ。どうぞ」
ゼロスの小さな体を抱っこして膝に乗せてあげます。
膝に向かい合うように座って、ゼロスはぎゅっと抱き着いてきました。
話しているうちに思い出して少し寂しくなったのかもしれません。ゼロスの大きな瞳は甘えたいと訴えるものです。
懐のゼロスを覗き込むと嬉しそうに笑ってくれました。
「それでね、ありさんみたの。ありさん、おさんぽしてた」
「ゼロスもお散歩大好きですよね。他にも何か見つけましたか?」
「ちょうちょさんもいたよ。おいかけっこした!」
「それは楽しそうですね」
そう答えながらも内心はハウストへの同情を深めました。
たぶん、おそらく、この辺りからですね。雲行きが怪しくなったのは。
「でもね、ちょうちょさんいなくなって、まいごになったの」
「それは大変です。大丈夫でしたか?」
「うん! やくそう、みつけたよ? かわにカエルさんもいた!」
「そうですか、そこで薬草を見つけたんですね。でもゼロス、一人で川に入ったんですか?」
「あっ!」
ゼロスが慌てて自分の口を両手で塞ぐ。
うっかり漏らした川遊び。もう分かっていた事なのに、しまった! とゼロスの顔にありありと描いてあります。
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