4 月音の能力(ちから)

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正座する月音と、そのすぐそばにいる百合緋。 そして少しだけ離れて座っているのは、銀色の畳に届いてなお余る髪と、和服を着て腕に羽衣みたいなものを絡ませている女性だった。 年のころは二十代前半に見える。 出で立ちからして、あきらかに人間ではない。 (天音さんって確か、縁さんが言ってた人だ……天女なんだっけ? 天女ってあやかしだったんだ……) 自分の記憶と照らし合わせる煌。 確かに、人間離れした面差しをしている。 「――って、父様!? なんで!?」 最後に姿を見せた碧人に声が大きくなった月音の前に、白桜が片膝をついた。 「月音、碧人から何か話があるようだ。小田切と一緒に聞いてもらえるか?」 「は、はい……?」 白桜の言葉の意味を探りかねてか、月音は首を傾げた。 白桜に促されて百合緋と天音が退室し、反対に煌と碧人が客間に入って、それぞれ正座した。 「月音……」 「は、はい、父様」 煌は、こくりと息を呑んだ。 月音が知らなかったという母の話をするのだ。 月音はショックを受けるだろうか……。 「実は、煌くんにお前の許嫁になってもらうことになった」 「はい……ええっ!? な、なんで……?」 至極もっともな反応だった。 ついさっきまで彼氏ですらなかったのに。 「煌くんには承知をもらっている。ご家族に話すのは、まだこれからだが……」 「いや待ってください父様、なんでそんな話になってるんですか。私がいない間に何があったんですか。ちょっと小田切くんも真顔やめて。怖い、なんか怖いよこの空間」 月音が安定の混乱をしている。 まあ、そうだわな、と煌は糸目になった。 いきなりこんな話ぶちこまれたら誰でも驚く。 そんな娘を見ながら、碧人は感慨深げにつぶやいた。 「お前は本当に華音(かのん)には似なかったなあ……」 「母様ですか? そうは仰っても、父様ろくに教えてくれませんし、私に母様の話をしてくださるの大叔父様しかいませんし……。でも大叔父様の語る母様って、なんか妖精みたいんですよね……」 どんな方だ、月音の母。半眼になる煌。碧人は深くうなずいた。 「ああ。叔父上とは、華音を争った仲だから」
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