4 月音の能力(ちから)

26/27
前へ
/92ページ
次へ
「御門のご当主、場を貸してくださいましてありがとうございました。話は終わりました」 碧人がふすまの方へ向かって言うと、すぐに開いて白桜と黒藤が顔を見せた。 「まとまったか?」 「はい。つつがなく」 「それは何より。他流派への通達は、碧人に一任して構わないな?」 「もちろんです。あとのことは、神崎で蹴りをつけます」 「そうか。――小田切、月音」 白桜に呼ばれて、笑い合っていた月音と煌が顔をあげた。 二人とも座った姿勢で白桜は立っているので、見上げる恰好になる。 白桜が膝を折って、ふっとほほ笑んだ。 「おめでとう。言うには早いかもしれないが、末永くな」 「は、はいっ」 「色々ありがとう、月御門。黒藤先輩も」 月音と煌が言うと、白桜は笑んだままで、黒藤はにっと歯を見せて笑いひらりと手を振った。 碧人が月音と煌を見る。 「では月音、私たちはお暇(いとま)しよう。煌くん、改めてご挨拶に伺うから、私の連絡先をご両親に渡しておいてくれないだろうか。高校生同士のお付き合いだけでなく、許嫁の話もしないといけないから」 「あ、はい。伝えておきます――……月音ちゃん?」 月音が、目を皿のようにして煌のことを見てきた。 煌が気づくと、すっとその目は碧人に向く。 ……あれは何か言いたいことがあるときの目だと、わかるようになってきた煌だ。 「何か言いたいこととかあった?」 「……ううん……なんでもない」 「………」 なんでもない間(ま)ではない気がしたけれど、碧人もいるしここは白桜の家。 あまりあがりこんだままでも迷惑だ。 あとで確認しようと決めて、碧人の促しに従って客間を出た。 御門別邸の門まで、白桜だけでなく百合緋と天音も見送りに出てくれた。 黒藤はまだ用事があるとかで、見送る側にいる。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加