5 二人の過去

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5 二人の過去

月音の家と煌の家は方向が同じなので、煌、月音、碧人の三人で帰ることになった。 煌、いささか緊張中。 「あの、月音ちゃんのお母さんってどんな方だったんですか?」   煌の質問に、隣を歩く月音がこくこくうなずいて、更に隣にいる碧人を見上げた。 「私も聞きたいです父様。大叔父様の話は現実味がなくて……。もう教えてくださいますよね?」 桜木のことを娘に知られないために、碧人は母のこともあまり月音に話していなかったようだ。 娘の言葉を受けて、懐かしそうに眼を細める碧人。 「うん。華音は、少々ばかり気性の狂った人だったね」 「……え」 「は?」 気性の狂った人……?  自分の奥さんを紹介するとき、そんなことを言う人はいないだろう。 煌と月音が顔を見合わせた。 それを見て、碧人は続きを話しはじめた。 「華音は自分が桜木の娘だと知っていて、その上で、自分の血であやかしを消すのが趣味だったんだ」 「え……」 「か、母様ってそんなやばい方だったのですか……?」 月音が青ざめていく。 桜木の血というものがどういうものか、そして自分がそれを継いでいることも知った月音は驚いたようだ。 碧人は淡々と話す。 「それで桜木家から追い出されて……さすがにまずいと感じたようで、その趣味は改めることにしたようだ。その頃に出逢ったんだよ。お互い高校生だった」 「その頃には父様は神崎を継いでおられたのですか?」 「いや、私の父――月音の祖父が亡くなったのは私が大学生の頃だから、まだ父上がご存命の頃だね。出逢ったときの華音は桜木の名前もはく奪されて、家を追い出されて、かなりやさぐれていたよ」 「母様ヤンキーだったのですか!?」 月音の声が裏返った。 「いやそこまではいかないんだけど、一匹狼、みたいな感じだったかな。触れるものは皆切る、とか」 「お、大叔父様の話と違い過ぎる……」
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