恋の最適解

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「そう。私がその問題を知ったのは大学1年前期、18歳のときだったの。面接をした時点で合否を決めるスタイルで最も有能な秘書を採用するための数学的アプローチは、そのまま結婚の選択にも応用できる。例えば18歳から28歳の10年間で、毎年1人ずつ合計10人の異性と付き合う場合、結婚するのに一番ベストな相手は何番目の恋人か」  ルミちゃんの息継ぎのために、僕は後を繋いだ。 「そうだね。条件としては、付き合っている時点で決めなければならない。つまり、別れた元恋人とはよりを戻せない、結婚が決まれば、これから出会うかもしれない人のことは知り得ない。あとは、プロポーズは必ず承諾される、という前提つきだね」 「そうね。詳しい数式はタッくんも履修済みだから割愛するけど、結論としては『全体の1/e(eはネイピア数)、つまり約37パーセントは無条件で見送り、その中の最良を基準にして、以降に付き合う人の中でその基準を上回る相手と結婚を決めると、最高のパートナーと結婚できる可能性が高い』ということだったわ」 「18歳から28歳の10年間で、10人と付き合うという前提の上では、3人目までは比較対象とするために無条件で別れ、4人目以降、最初の3人中1位だった人を上回る相手と出会ったタイミングで結婚を決める、ということだね」  2人で一息に結論までをおさらいし、それぞれアイスコーヒーとロイヤルミルクティーで乾いた口を湿らせる。  ルミちゃんが思いの丈をすべてぶつけてくれたおかげで、納得したとともに、理論が僕の守備範囲内であったことに安堵した。 「だから……別れたいの」
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