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残された僕と父は、その後もこの家で生活を続けた。続けられてしまった。母の朗らかな声を失っても、僕たちは沈黙の内に生きられてしまった。母の手料理を失っても、獲物を失うことはなかった。多少味付けが単調になったが、食べて飲んで糞して寝る、連綿と続く生きるという営みが絶えることはなかった。家は二匹の獣が寝食を共にするだけの巣になった。
昔と違って狩猟をするにも資格が必要で、お金が掛かる。狩猟を行なうにはハンティングチケット(狩猟免許)を取得し、猟銃所持許可申請しなければならない。州政府から捕獲許可証を購入し、獲物の種類や頭数、利用日数に応じた猟区利用料を猟区管理団体に支払う必要がある。こういった最低限の手続きを行わないと密猟者になってしまう。
最低限の人間的な社会規範を守ることは、僕たちが森で生きるために必要だった。自然保護は副次的なもので、実際のところは資源保護が目的だ。ただ自然のうちに生きていた時代から、人間が動物を管理する時代になった。父と僕のような前時代的な獣に、人間社会での居場所はない。
狩る。剥ぐ。解体する。食べる。売る。飲む。寝る。
この中で売るという行為だけが自然界に発生しない行為で、僕たちが言葉を発するのもほとんどこの時だけだった。
父が僕自身に語り掛けたのは、いつも森の中だった。本来狩猟免許を取ってすぐにはライフルの使用が許可されず、散弾銃を使用しなければならない。だけど僕は子供の頃から父にライフルの使い方を教わっていた。
ライフルは散弾銃と比べて射程距離も長く、命中精度も高い。散弾銃は小型の獣や鳥撃ちに向いている。散弾銃が面で制圧するならライフルは点で穿つ。父は大型の獲物しか狙わない。食物連鎖の頂点に立つためなのか、理由は定かではない。
とにかく父は僕を強者に育て上げるために、狩猟者としての全てを叩き込んだ。ライフルの手入れの仕方。音を立てない歩き方。獲物の痕跡の見つけ方。実包の作り方。弾を装填してから撃つまでの動きを最小限にする方法。獲物の回収、解体。まぁ調理は最低限だったが。
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