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母が家を出てから数年が経ち、正式にライフルを持つ資格を得たが、僕は散弾銃を使用している。日用の糧を獲るためにライフルは威力が高過ぎたし、スラッグ弾を籠めれば鹿などの大型の獣にも対応できる。僕は常に二種類の実包を持ち歩いていた。
だが唯一、父と狩猟に出る時にだけ、僕はライフルを手に取った。
「明日は一緒に来い」
「分かった」
『名前を呼んではならないあの獣』を狙うときだけ、父は僕を連れていく。近くでその痕跡を見つけた時だ。放っておくとこちらが殺られる。殺られる前に殺る。人を襲う獣に対して取るべき、唯一の対抗策だ。父が一つの獣に固執する理由は、僕には分からない。
一人が囮になり、一人が仕留める。歳を経て、僕の容姿はまた父に近づいた。僕らは同一の種族、同一の群れ、同一の個体であるかのように、境目があやふやになっていた。それは森に生きる動物たちの生態とよく似ていた。
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