月夜に乞われて

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「大丈夫ですか? 救急車呼びますか?」 何やってんだ俺は。わざわざ暗い路地にまで入り込んで。 けど、放っておけないんだよなぁ。 この人がせめてタイプのイケメンだったらいいのに。 こんな時でもそんなことを考えちゃった自分に呆れつつ、尚も吐き続ける男のそばにしゃがみ込んで、とりあえず背中をさすってみた。 少しでもラクになってくれたらいい。吐き気が治れば案外平気かもしれないし。 「お兄さん大丈夫? スポーツドリンク買ってこようか?」 人が良すぎると言われても、困った人を見ると放っておけない。 だから付け込まれるんだろうな。大雅みたいなやつに。 「お兄さん、しっかり」 「ほしぃ」 「え? なに?」 うまく聞き取れなかった。嘔吐で消耗し過ぎなせいか、通り過ぎる車がスピードを出しすぎなせいか。 ふと、足元に転がっているものが目に入った。トマトジュースの缶。 なんでこんなところに?
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