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それにしても、満月だから狼に会っただなんて、子供でも言わないような嘘つきやがって。
どうせ女のとこにでもいたんだろうって店長が言って。
なんだよ女って。
お前だけだって、俺を抱いたくせに。
「はぁ」
ため息が白い。
遅刻した大雅の代わりにシフトに入ったせいで、バイトの上がりが一時間以上遅れた。店長は喜んでくれたし、その分バイト代も増えるからいいんだけど。
見知った人が通らないせいか、なんとなく心細い。
冷えた手をポケットに突っ込んで歩いていくと、何かが聞こえてきた。
つい確かめたくなる。
けどやめた方がいい。だって、きっとロクなことにならないから。
そう思っていたのに足を止めてしまった。
覗いた路地の奥には、嘔吐しているらしき人影。
まあ大丈夫だろ。
そう思いたかったけれど、絶対大丈夫じゃねえ、と察してしまって。
同情したっていいことなんかない。わかってる。吐いてる奴の世話なんかしてもなんの得にもならないってことは、重々。
なのに。
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