静けさの中の子どもたち

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今日は学芸会。 学校の体育館には、我が子の発表を見ようとたくさんの保護者が集まった。 集まったのは保護者だけではない。 地域の方々もたくさん見に来ていた。 自分の子どもではなくても、頑張る子どもの姿を見るのは心が洗われる思いをするものだ。 地域にとって、子どもたちは宝なのである。 そして、なんと今日は、マスコミも取材をしに来ている。 そろそろ開演だ。 さっきまでざわついていた体育館は、静かになっていく。 校長は挨拶を終えた。 教務主任が、プログラムを読み上げる。 次の発表は合唱。 体育館は、水を打ったような静寂に包まれた。 担任の佐藤先生が指揮台に立つ。 タクトが振り下ろされると同時に、子どもたちの合唱が始まった。 しかし、無音だ。 体育館は依然として静寂に包まれている。 無伴奏の曲というわけではない。 曲は誰でも知っているような童謡だ。 伴奏がないだけではない。 子どもたちの歌声もいっさい、ない。 体育館は静けさに包まれている。 しかし、佐藤先生は指揮棒を振り続けている。 子どもたちは歌っていないのか? いいえ、そんなことはない。 ステージに立つ子どもたちは、皆、生き生きとした表情を浮かべ、 リズムを取って楽しく
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