静けさの中で

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黒海とクリミアを望む、港湾都市オデッサ。 そこに、小さなビジネスホテルがあった。 小麦を買い付ける西側の商社マンのために西欧風にしつらえてあり、上階にはちょっとしたラウンジバーがある。 カウンターでは、店長がのんびりとグラスを磨いていた。 イギリス人にはスコッチ、アメリカ人にはバーボン、フランス人にはブランデー、ドイツ人にはビールを用意していたが、ロシア軍の侵攻以来、客足はまばらだった。 戦争が始まってすぐに、この店長は兵役を志願したが、不合格とされた。 すでに50歳を過ぎていたし、生まれつき片耳が聞こえなかったからだ。
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