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──今日こそ。今日こそ、勇気を出して行動するんだ。
美羽は将也──元カレの高校の前にある公園で彼が出てくるのを待っていた。
元カノが何度も元カレの周囲をウロウロする状況。
──いいかげんにしないと不審者だと思われる。
でも、諦めきれない。将也の気持ちが戻ってこなくても、これだけでも何とかしたい。
今日はバレンタイン。今日なら逢いに来ても、待ち伏せしてても不自然じゃない。
──勇気を出すんだ!!
「まさ――」
「将也くん。はいこれ」
その時、美羽の横をすり抜け、他校の女生徒が将也にチョコレートを突きつけた。
「わぁ。ありがとう!」
「これからもヨロシクね」
「こちらこそ!」
今カノとの弾けるような将也の笑顔を見て、美羽の勇気は急にしぼんでしまった。
将也は女癖が悪かった。
浮気が原因で別れたというのに、今も美羽の心の中で大きな位置をしめている。
──しょうがない。バレンタインに免じて今日は許してあげる。
そういう美羽の両手には鞄から取り出したナイフがしっかり握られていた。
(了)
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