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そこへ、足早に近づいてくる大きな足音がしたと思ったら、ドアが勢いよく開いた。
「ショーン、無作法よ。落ち着きなさい。」
「この後も演奏会の打ち合わせがあるんだ。
ああ、君が新しい家政婦?」
私の前に立ったのは輝く金髪と緑に近い水色の瞳の、まるでルネサンスの絵画から抜き出て来たような美しい青年だった。
その青年は挨拶をしようと立ち上がった私を上から下までじろりと見た後、ふんと鼻を鳴らして言った。
「きちんとしてくれるなら文句はないよ。」
お二人に比べて平凡な私の容姿が恥ずかしくなる。
私は茶色い髪の毛、少し明るい茶色の瞳。
どこにでもいる平々凡々な見掛けである。
「ごめんなさいね、マリエル。
私の息子のショーンよ。
周りがちやほやするものだからわがままになってしまって。
ちゃんと挨拶しなさい。」
いやいや、雇い主から挨拶してもらうわけには、と慌てて私から挨拶をした。
「本日から家政婦としてお世話になりますマリエル・パーカーと申します。
よろしくお願いいたします。」
「よろしく。」
そっけなく言ったかと思うと、彼はくるりと母親の方に顔を向けた。
「じゃあ母さん、僕は行くから。
帰るのは今夜遅くなると思うよ。」
「ええ、気をつけて。」
その美青年は嵐のようにやってきて嵐のように去っていった。
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