プロローグ

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プロローグ

 僕はこわばった手で自らの両腕にナイフを入れる。  何よりも大切な宝物である両腕に。  ぼくの最大の望みのために。  僕と共に悪魔に魂を売ってくれた彼女のために。  血は流れ、固く冷たい石の床を赤く黒く流れてゆく。  赤に染まる両手を大きく開いて高く掲げ、ゆっくりと下げる。  かざした手の先には、静かに眠る男児。  男児の白い肌の上に生暖かい僕の血が注がれる。
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