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エピローグ
取材を終え、私は会社の最寄り駅にあるコーヒーショップで時間をつぶしていた。
温かく甘いキャラメルマキアートが、喉を伝っていく。
少し気持ちを落ち着けたかったが、周りの喧噪が邪魔をした。
あの人と話をして、何食わぬ顔ができるはずもなく。
ただ一つ、腹をくくったことがある。
もう、自分を殺してまで、こんな記事を書きたくない。
でも、そうなったら、新聞社に勤めることはできない。
だったら、潔く去るのも手だ。
西浦は、自分の心を殺し続けて、手近な欲に走り、どこにも逃げ場がなくなったのだから。
決意を紙コップに込め、力いっぱい握りつぶして、ゴミ箱へと叩き込んだ。
店の自動ドアが開き、一歩外へ踏み出すと、あたりはすっかり黄昏に染まっていた。
交差点で信号待ちをしながら、ふと街頭スクリーンを見上げた。
例のCMが映し出されている。
隣に並んでいる女子高生や大学生の若者たちは、「うけるー」とスマホで写真を撮り続けていた。
私は、どうして、こんなに嫌悪感があるのだろう。
西浦ほどの確固たる理由はない。
けれど、やっぱり私は嫌いだ。
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