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三カ月も経つと傷はすっかり癒えて、誰もそのことに触れなくなっていた。
「僕、この間、ほんとに辛くてさ」と口走ると、「俺も昔、両足骨折したことあるよ」などと打ち消されてしまうくらいだ。
さらなる手段を考えなくては。
散々、頭をひねったあげく、僕はまた怪我をすることにした。
あの視線を集めるためには、もっと過激なことをしなくては。
「骨折と全身打撲以上の怪我か…」
両足骨折やリンパ腫など他の猛者を上回るような痛々しい何か。
僕はそっとコンパスに手を伸ばしていた。
針の部分のキャップを外すと、その切っ先を思いきり右目に突き刺した。
また、家族の悲鳴とお医者さんの呆れ顔。
でも、僕の心は踊っていた。
血まみれになり、激痛を伴いながらも、教室へと一歩足を踏み入れた瞬間の喜びを想像していた。
このころから、学校への登下校は姉たちが車でしてくれるようになった。
僕は、包帯を巻き付けた右目を抑え、うきうきしながら教室へ向かったのだが、そこには思い描いたものとは違う光景が広がっていた。
これまでの英雄視とは全く違う反応。
無関心。
中には、蔑むものもいた。
片目でも、淀んだ灰色の悪意が教室の空気に伝染していくのが分かった。
そして、誰かの冷ややかな声が、ぽつりと聞こえた。
「普通、ああはならないだろ。マジで、かまってちゃんだよな」
声の方を振り返ったが、群衆のどこから聞こえたのかは分からなかった。
僕の生きる場所は、完全になくなった。
あの快感を与えてくれた鮮やかな聖地は、一瞬で色褪せ、無残にも崩れ落ちていった。
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