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 僕は、家に引きこもるようになった。  髪はすっかり黒く戻り、ピアスの穴も全て塞がった。  母と姉たちと、ただぼんやり過ごす日々。  一日三食のほかに、午前十時と午後三時にはティータイムがある。  心配をかけてはいけないと、家族の前ではいつもの作り笑顔を張り付けていた。  でも、いざ一人の時間になると、多くの注目を浴びて輝いていた、かつての自分が頭をよぎり、虚しさを覚えた。  あの時のような高揚感はもう味わうことはできないのだろうか。  いや、そんなことはない。  まだ方法はあるじゃないか。  僕は物置の奥深くにしまわれていた鉈を取り出し、エコバッグに詰め込んだ。
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