式子恋歌

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式子恋歌

㈠汚れなき花のいのちを捧げにし されば神よ 斉宮(いっき)の神よ 早もや我を解き給え 放しませ 式子は人と恋がしたいのです ㈡恋うれども衆生済度の人は来ず されど君よ 頼むは君よ さりとて我を見捨つるな 女犯(にょぼん)とて 式子の心真でございます 〔セリフ〕「生きてよも、明日まで人はつらからじ。この夕暮れを問はば問へかし。ああ法然様、遂に来ては下さらないのですね。式子はもう長くは生きられません。謀反の君の妹と云っては世に隔てられ、今は誰ひとり私を尋ねて来はしない。式子はもう…久しくひとりぼっちです。あなたと結ばれる夢も今はあきらめました。ただ、ただ、最後に一目だけ…あなたのお顔を見て死にたいのです。法然様、法然様、どうか、どうか、一目だけ…御目文字くださいませ」 ㈢春夏か秋冬なるか知りもせず 今は一人 久しく一人 思い余れど何しょうぞ すさぶまま 式子はただに寂しゅうございます            【式子内親王イメージ挿絵】 ※式子内親王は斎院として10年間を過ごされ退下した後も生涯を独身で通された方でした。不遇の境涯を送られ、それゆえの身の孤独さを詠んだ数々の名歌を残されています。多くはその歌から連想し、また石丸明子さんが書かれた「面影びとは法然」からも連想して斯く作詞した次第。特に下記の内親王の和歌には思わずグッとくるものがありました。ひょっとしたら一生を孤独な独り身で通した自身の境涯をそこに見たのかも知れません…。 「あともなき庭の浅茅にむすぼほれ露の奥なる松虫のこゑ」内親王御歌32557afa-0589-4310-8f7c-bc2007fd2a81
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