戦線離脱

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 しばらくするとレーザー照射を感知する警告音が小さく鳴った。それが敵か味方からのものかを判断できる機材を動かせるほどの能力を、補助バッテリーは持っていない。  だけど、もちろん僕はわかっていた。もう大丈夫だ。  やがて微かな振動を感じた。救助船が僕の機体を物理的に捉えたのだろう。  それからたびたび小さな振動を感じた。  幾重にも密閉されたコックピットからは外部の音を聞くことはできない。そのわずかな振動が順調に救助船の中へと導いてくれているのだと教えてくれる。  その間に何度か無線の主と交信した。  僕は最近開発された有人戦闘マシーンの数少ないパイロットだった。そのために救助に指定された艦は、軍の上層部からもし生きているのなら何が何でも無事に連れてこいと厳命されてきたらしい。僕がすっ飛ばされた方角は、戦闘中の他の機体のレーダーに残されていたデータから割り出した。 ”あんたの機体の生命維持装置が働いているのを感知した時はほっとしたよ“ ”無線の連絡に応えてくれた時は飛び上がらんばかりに嬉しかったぜ“  まだ階級も名前も名乗っていない通信相手はそんなことも話してくれた。  また無線が反応した。非常用なので、いちいち操作しなければ通信できない。 “収納した”  連絡はそれだけだった。 「ありがとうございます」  僕は精一杯の誠意を込めて応えた。  やがて機材が立ち上がる微かな音がしてモニター群が点灯した。  外部から電気が供給されたらしい。  僕は幾つかの操作を行い、無線のスイッチを入れた。 「FH-7-3のジョン二尉です。コックピットのハッチを開けてもよろしいですか?」 “オッケー。お帰り、ベイビー”  無線の先の相手はいつでもそんな感じなのだろう。  僕は最後のスイッチを押した。  徐々にハッチが開いていく。  空気に満たされた狭い格納庫の様々な雑音が、コックピットの中に押し寄せてきた。  それらの音を聞いて、僕はやっと生きて帰還できたのだと実感した。                              終わり
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