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呪いのチェキ
北原ヒロキは賀茂から借金の代わりに譲り受けた『呪いのチェキ』を手にし喫茶店を飛び出した。取り敢えず街へ繰り出した。
『このチェキで撮ったヤツは呪われる』
そんな古臭いカビの生えた都市伝説を信じたわけではないが、試しに昔、イジメていたヤンキーたちを盗撮してやろうと考えた。
軽い気持ちで北原ヒロキは地元の美浦駅へ降り立った。
都心から一時間あまりのこの辺りも過疎化の波が押し寄せている。駅前もシャッター商店街が並んでいた。地元が寂れていくのは憂鬱だ。
「確か、この辺のはずだ……」
さんざん中学時代にイジメられたので、ヤンキーたちの住所は全員、覚えている。
先生たちには見つからないように陰湿なイジメを受けていた。
親にも相談できず毎日、学校へ行くのがストレスだった。胃が痛く胃潰瘍寸前だった。その報いを受けさせてやろう。
北原ヒロキはイジメっ子たちを次々と隠し撮りしていった。全員で四人だ。なかなか骨が折れた。
「さァ、どうなるんだ?」
呪いのチェキで盗撮さられたヤンキーどもは事故にでも遭って死ぬのか。それとも殺人事件にでも巻き込まれるのか。
だが期待はしたもののなにも起こらず、イタズラに数日が経った。
「なぁんだ。なにが『呪いのチェキ』だよ。やっぱりウソじゃないか」
どうやら賀茂に騙されたようだ。
チェキで盗撮したヤンキーたちは何ごともなかったみたいに毎晩、女たちと酒を飲み遊び呆けている。
「チィッ」
なにが呪いのチェキだ。ニセ陰陽師が。今度、会った時は絶対に借金を取り立ててやろう。
その後、忘れた頃に友人の賀茂からスマホに連絡があった。
『もしもし、オレだけど。ヒロキか?』
「ああァ、なんだよ。賀茂」
少しヤケ気味に応えた。
借金の代わりにゴミを掴まされた気分だ。
『どうだ。あれから。あの呪いのチェキを使ったのか?』
「えェ、ああァ、使ったけど何ともねえェよ。盗撮されたヤツらは毎晩飲み歩いてピンピンしているらしいからな」
『マジか。マジで撮っちゃったのか?』
「悪いのかよ。どうせ都市伝説なんだろう。今度は賀茂でも記念に撮ってやろうか」
『うゥ、やめてくれよ。お願いだからオレを隠し撮りしねえェでくれよなァ!』
「ハッハハ、撮らねえェよ。お前のことなんか。安心しろ。どうせチェキで撮らなくったってお互い充分、不幸だろう。お前もボクも……」
『おいおい、ジョークじゃないんだ。誰と誰を盗撮したんだよ?』
「えェ、誰って? 賀茂には関係のないヤツだよ。中学の時、イジメられたヤツらさ」
『中学の時、イジメられた……?』
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