呪いのチェキ

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呪いのチェキ

『ああァ、まさか……?』 「そうなんだ。そのまさかなんだよ」 『マジか。なにがあったんだよ』 「それが昨日の深夜に四人とも酒飲み運転で大事故に遭ったらしいんだ」 『えェ、酒飲み運転で大事故に……?』  さすがに賀茂(カモ)も顔色を変えたみたいだ。一瞬、息を飲んで繰り返した。 「ああァ……、それもボクが盗撮した四人全員だ」 『ううゥン、やっぱりあのチェキの呪いなんだ』 「ああァ、たぶんそうかもしれないけど。ちょっと、この前の駅前の喫茶店で会えるか?」 『え、構わないが……、今、ちょっと抜けられないから、また後で連絡するよ。それから無闇やたらにそのチェキを使うなよ』 「あ、ああァ、わかった」  しかしヒロキは通話を切ると考えた。  ヤンキーたちが事故を起こしたのが、もし本当に『呪いのチェキ』の力なら、もう一人、どうしても復讐したいヤツがいる。  高校時代の美術教師の清川だ。  あの男を合法的に呪い殺せることができるなら、これ以上愉快なことはない。もちろんヒロキ自身の手を汚さずにだ。  さっそく北原ヒロキは清川の行方を突き止めた。幸い圏内に住んでいる。  また隠れて清川の姿を盗撮した。いつ見ても性犯罪者のようにイヤらしい目つきだ。眼鏡の奥のつり上がった目が意地の悪さを物語っている。当然だが、独身なのだろう。女子生徒からは蛇蝎のように嫌われていた。  それ以上にヒロキも清川には怨み骨髄だ。まったく教師には向いていない。  何度も清川の前で恥をかかされた。人間性を否定され、殴ってやろうと思ったことも幾度となくあった。  本当に、この『呪いのチェキ』に効果があるのならに彼をターゲットにすれば良かった。残念だが、まだ遅くはない。 「フフゥン……」  ヒロキは清川を何枚も隠し撮りし、満足げにほくそ笑んだ。  だが期待していると失望も大きい。盗撮したものの普段通りの様子だ。取り立てて何も変わりはない。  清川は相変わらず、ふてぶてしく教師をしていた。  
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