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呪いのチェキ
「スカイツリーに昇って展望台からグルッと東京じゅうを撮ったら、東京じゅうのヤツが呪われるのか?」
ヒロキはチェキを手に取って減らず口を叩いた。
「えェッ、まさか、マジでやる気なのか?」
一瞬、賀茂も眉をひそめ戸惑ったようだ。
「なんだよ。ビビッたのか。東京じゅうを撮ったら全員、呪われて東海大震災でも来るって言うのか?」
「ぬゥ……」賀茂はヒロキを睨んだ。
「ハッハハッ、そんなバカなわけはねえェだろう!」
またヒロキはバカにして笑った。
相変わらず信じきってはいないようだ。
「ああァ、そうだな。だけどマジで東海大震災が起きるかもしれないな」
賀茂も視線を逸らした。
「そりゃァ、起きるかもしれないさ。だけどそれは『呪いのチェキ』の呪いじゃないよ。いつかは東海大震災が起こるんだろうからな。近い将来か、遠い未来には確実に。一時間後かもしれないし、百年後かも……、もしかしたら千年後かもしれないだろう。いちいち天変地異を呪いの所為にするなよ。平安時代じゃねえんだから」
ヒロキは愚にもつかない御託を並べた。
「ああァわかったから変なモノを撮るなよ。天変地異が起こるかどうかは別にして。頼むから、そのチェキを誰かに譲るんだ。じゃないと!」
「じゃないと、なんだよ。今度はボクが呪われて死ぬことになるって言うのか?」
「えッ?」
「ハッハハッ、笑わすなよ賀茂ォ。陰陽師だか、なんだか知らないが二十一世紀なんだぜ。今は。そんな呪いなんてあるわけがないだろう」
あくまでもヒロキはリアリストだ。
「だけど、お前の持っているその『呪いのチェキ』はマジなんだよ」
「そうか。じゃァあと少しだけ貸しておいてくれよな。もう何人か怨みのあるヤツがいるんだ」
「おいおい、ふざけるな。とっとと手放すんだ。そのチェキを」
賀茂は無理やり奪い取ろうとした。
「うるさいな。お前を撮るぞ」
だが逆にヒロキはチェキを構えて脅した。
「わ、わかったよ。冗談でもオレにそのチェキを向けるな」
賀茂は必死に手で遮ろうとした。
「わかってるよ。あと二、三人だ。そしたら誰かに譲るからさ。頼むよ」
ヒロキも約束をした。
「ぬウゥ、知らないからな。オレは」
ようやく賀茂も諦めたようだ。
「悪いな。ハッハハッ、借金はチャラにしてやるからさ」
もう少しの間、ヒロキは呪いのチェキを借りることにした。
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