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墓穴を
だが、さしあたって呪いを掛けたいほど怨みのあるヤツは見当たらない。
そういえば以前、振られた女性をチェキで撮ることも考えたが、今は幸せそうに彼氏と暮らしているようだ。
そんな仲睦まじい姿を見ると悔しいが『呪いのチェキ』で盗撮するのは気が引けた。
そんな時、テレビで両親とひとり娘の一家三人を惨殺した事件の容疑者が逮捕されたと報じていた。
ワケのわからないことを大声で喚きながら警察へ連行されていく姿が画面に映った。まだハッキリとした動機は解らないが、ふてぶてしい態度の容疑者だ。
おそらく娘をストーカーした挙げ句、両親に邪魔をされたと思い凶行に及んだのだろう。
「ンうゥ!」ヒロキは歯噛みする思いだ。
コメンテイターは揃って動機の解明を急いでほしいと言っている。
だが、こういう容疑者に限ってまったく身勝手な動機に違いない。しかも証拠が揃っているのに、無実だと声高々に叫んでいる。
「ッたく……、こいつの方が死ねば良いのに」
試したことはないがテレビの画面を映しても呪いはかかるのだろうか。実験を兼ねてその容疑者の画像をチェキで写してみた。
しかしこれまで同様、呪いの結果はすぐには出ない。時間がかかるようだ。
だが一週間後、その男は獄中で不審な死を遂げた。どうやらテレビの画像でもチェキで写せば呪いの効果があるみたいだ。
しかしヒロキはその容疑者の死を知ることはなかった。
ある日のこと、ヒロキが街中を音楽を聞きながら歩いていると不意に、背後で騒ぎが起きた。
「えェ……?」何ごとかとボリュームを下げた。
「ああァ、危ない!」
「上だ。上ェ……」
通行人の誰かが必死に上空を指差して叫んだ。
「な……?」
上空から物凄い轟音がし、ヒロキは上空を見上げた。
その時、何かドデカイ物が落ちてきた。
「あ!」
それは一瞬のことだった。
「わッわァァァァーーーーーーーッ」
思わずヒロキは声を限りに絶叫した。
そんなバカな。撮ったヤツが呪われるのか。そうヒロキが思った瞬間、逃げていれば助かったのかもしれない。
だが一瞬遅く、彼の真上に落下物が落ちてきた。
その瞬間、彼は暗闇の住人となっていた。
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