盲聾

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 その日から、娘と小僧の生活が始まりました。  小僧は、朝から夕方まで離れで過ごします。  夕方を過ぎれば、使用人の部屋にある一枚の布団が、小僧の居場所です。  小僧は、使用人の部屋ではとても気味悪がられました。    小僧は、娘に話をしました。  小僧は娘の掌に、指で文字を書いていきます。  離れの静けさの中に、音のない会話が繰り広げられます。    小僧は貧しい家の生まれで、子供の頃は、晴れの日も雨の日も田畑を耕し働いていました。  毎日働き、毎日空腹で、時々両親に殴られていました。  小僧には兄弟が七人いて、耳の聞こえない小僧は、三番目でありながら最も下の立場でした。  もっと稼ぎたい、家を出たい、そんな想いから流れ流れて何でも屋。  小僧の話は、小僧にとって普通の話でした。    しかし、娘は楽しそうに小僧の話を聞きます。
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