5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
その日から、娘と小僧の生活が始まりました。
小僧は、朝から夕方まで離れで過ごします。
夕方を過ぎれば、使用人の部屋にある一枚の布団が、小僧の居場所です。
小僧は、使用人の部屋ではとても気味悪がられました。
小僧は、娘に話をしました。
小僧は娘の掌に、指で文字を書いていきます。
離れの静けさの中に、音のない会話が繰り広げられます。
小僧は貧しい家の生まれで、子供の頃は、晴れの日も雨の日も田畑を耕し働いていました。
毎日働き、毎日空腹で、時々両親に殴られていました。
小僧には兄弟が七人いて、耳の聞こえない小僧は、三番目でありながら最も下の立場でした。
もっと稼ぎたい、家を出たい、そんな想いから流れ流れて何でも屋。
小僧の話は、小僧にとって普通の話でした。
しかし、娘は楽しそうに小僧の話を聞きます。
最初のコメントを投稿しよう!