盲聾

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 さて、このまま逃げ切れれば愛の逃避行として、後世で美談になったかもしれません。  しかし、現実とは非情なものです。  屋敷の主からの追手は、すぐに娘と小僧の場所を捉え、どんどんと二人を追いつめていきます。  知らず知らずに誘導され、辿り着いたのは町のはずれの崖っぷち。  娘と小僧は追手たちに囲まれました。   「無駄な抵抗をしないなら、命までは取らぬ」    追手たちは、じりじりと迫ってきます。  この崖を飛び降りたら逃げ切れるだろうか、それとも死ぬだろうか。  小僧は選択を迫られました。    小僧は、娘の顔を見ます。  娘は体の揺れで小僧の動きに気づき、にっこりと微笑みました。    ――ついて行きます。どこまでも。    覚悟を決めた小僧は、崖を飛び降りました。
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