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小僧が連れてこられたのは、大きな屋敷の敷地内にある小さな離れ。
屋敷の主が、娘を一人住まわせるために作った建物です。
屋敷の主は離れの扉を開き、顎を動かして小僧に入れと命じました。
小僧の仕事は何でも屋。
言われたことは、なんでもやります。
しかし小僧は、耳が聞こえません。
会話による意思疎通はできません。
「お父様?」
離れの中にいた屋敷の主の娘が、機織りの手を止めて、音のした方へと顔を向けます。
「お前が欲しいと言っていた話し相手だ。耳が聞こえんから筆談になるがな」
屋敷の主はそう言い放つと、離れに小僧を置いて、さっさと出ていきました。
バタン。
ガシャン。
離れの扉は閉められて、外から鍵がかけられました。
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