盲聾

1/10
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 小僧が連れてこられたのは、大きな屋敷の敷地内にある小さな離れ。  屋敷の主が、娘を一人住まわせるために作った建物です。    屋敷の主は離れの扉を開き、顎を動かして小僧に入れと命じました。    小僧の仕事は何でも屋。  言われたことは、なんでもやります。  しかし小僧は、耳が聞こえません。  会話による意思疎通はできません。   「お父様?」    離れの中にいた屋敷の主の娘が、機織りの手を止めて、音のした方へと顔を向けます。   「お前が欲しいと言っていた話し相手だ。耳が聞こえんから筆談になるがな」    屋敷の主はそう言い放つと、離れに小僧を置いて、さっさと出ていきました。  バタン。  ガシャン。  離れの扉は閉められて、外から鍵がかけられました。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!