間話 亡霊と花嫁

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 ClaimはDomとSubが交わす契約であり一種の命令(コマンド)だ。Claimした二人は互いを唯一のパートナーとすることを誓い、SubはDomに絶対服従する。Claimの有無で違うのは、Claimした場合、二人の間にプレイ中だけでなく日常的生活のすべてにおいても主従関係が発生することだ。  DomはSubのすべてを、生活の衣食住まですべて完全に自分の支配下に置く。  さながら、ペットでも飼うように。  だから多くのSubにとって優しく裕福なDomに飼われることは一つの夢だった。 「お前だって、遥人くんのこと気に入ってるからこんなに長いこと側に置いてるんだろう。Claimすればお前だって安心して遥人くんを他のDomに貸し出せるんじゃないのか」  Claimで番つがいになっても同じ相手とのプレイで効果が薄れていくのは変わらない。だからDomは定期的に他のDomと互いのSubを"交換"する。時折柊二が遥人を連れていくあの店は、Domがそんな"交換できるSub"を探す場所でもあった。 「何にも執着しないお前があれだけ遥人くんに執着しているのは、お前なりに愛情を感じてるからなんじゃないのか?」 「愛情?まさか」  東條の問いに、柊二は睥睨したまま頬を動かさずに唇の端だけを器用に吊り上げる。冷め切ったその表情は、侮蔑にも嘲笑のようにも見えた。 「遥人を愛したことなんて一度もないよ」
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