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#5 秘密
いつものように午前中に採血を終え、午後いちばんの診察まで待つ。まだ四月にも関わらず初夏のような日差しに目を細める。時間を潰すために例のカフェに行くと颯真がいて、カフェモカと日替わりのホットサンドを頼んだ。今日はチーズとサルサソースのホットサンドで、颯真が考えたメニューらしい。カフェモカは店長特製で、颯真もコーヒーの淹れ方を勉強しているけれどまだ店長に合格を貰えないということだった。カウンターの奥の小さな焙煎機で丁寧に珈琲豆を煎っている細身のおじいさんを見遣る。
「その格好暑くない?」
黒のタートルネックを着た俺を見て颯真が言った。対する颯真はキッチン立つのもあって暑いのか半袖だ。
「寒がりなんだよ」
そう答えながらも服の下はじっとりと汗ばんでいる。
全部食べ切れずに持ち帰れるか聞いてみると、颯真は快く残りを包んでくれた。
「そういえば日曜暇?もし空いてたら、ご飯とかどう?」
一緒に何か美味しいもの食おうよ、と颯真が言う。
特に予定もないので誘いに頷くと、颯真は真夏の太陽のような眩しい表情で「じゃあまた連絡する」と笑った。
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