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「っ、ん……」
体が弛緩していくのと同時に、頭の中が白く霞がかっていく。それと同時にいつも胸の中で渦巻いている重たい淀のようなものが少しずつ薄らいでいくような心地を覚えた。
これに似た感覚をよく知っている気がするけれど、頭が回らず思い出すことができない。
「どう?返事はできる?気持ち悪くない?」
ぼんやりしたまま頷くと、先生は目を細めた。
マスク越しにくぐもった声で答えると、男の手が伸びてきて、俺の手に重ねられる。突然のことに体がひくりと震えた。
手の甲に重ねられていた男の手が顔へ近づいてくる。逃れたいのに体がうまく動かず、伸びてくる手を見つめることしかできない。
「ゃ……っ」
「うん……いい感じに力が抜けてきたね。その調子だよ……」
先生の手が俺の肩に触れる。人の体温に触れて、またひくりと体が波打つ。
「どう?今どんな気分ですか?」
「ど、んな……?」
「思ったことをそのまま言ってごらん」
男の手のひらがゆっくりと肩を撫でる。肌がざわざわと戦慄いて吐息が乱れる。
「せんせ……、ぁっ……」
「言ってごらん。今どんな気分?」
触らないでほしい、と伝える前に再び問いかけられて、意識が質問に答える方に向く。どうにか回らない頭を働かせて言葉を紡ぐ。
「頭の中、ふわふわ……して……」
「それで?」
「っぁ、ん……」
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